田辺ひゃくいちの冒険

踏みつけたくなるウンコを求めて。

西暦2055年の人類滅亡後に地球へ降り立った宇宙人により自分の部屋が古代遺跡として発見されるかもしれない、ひきこもりのわたしが心がけている5つの大切なこと

あけましておめでとうございます。人類が核戦争により滅亡する西暦2055年まで残り40年の節目となる2015年が幕を開けましたね。

ただ、一部で誤解もあるようですが、人類滅亡後の地球に生命体が二度と現れないかというとそうではないので注意が必要です。とある惑星において権力闘争に負けて宇宙に追放された地球外生命体の王子・シコシコと王女・パコパコの一族が、西暦換算で言うところの2555年に地球へ降り立つことになるからです。

シコシコとパコパコは誰もいない地球を開拓しながら、子孫を増やすべく性交渉に励むことになるわけですが、放射能汚染の影響からか、動物のような風体の奇形児が生まれるケースも少なくなく、この星に漂う呪いのようなものを次第に畏れるようになります。そして、この星に古来から住まう神に救済を求める祈りを捧げようとします。

ただ、シコシコとパコパコには、この星にどのような神が存在するのか、何を崇めればいいのか、見当がつきません。なぜなら、彼らはこの星における「歴史」を持ち合わせていないからです。彼らは「神話」や「歴史」という確固たる物語を心の底から欲することになります。

そんなとき、シコシコが夜の性交渉に使えそうな木の棒を探しに暗い森のなかへと入り、運悪く深い穴に転がり落ち、地底にほぼ完全な姿のままで残された「わたしの部屋」を発見してしまったとしたら、一体どうなってしまうでしょうか。

きっとシコシコは、わたしの部屋を神聖なる古代遺跡として都合よく考えてしまうでしょう。そして、わたしの部屋の発掘状況を頼りに新たな神話を創り出し、新たな歴史を開始させようとしてしまうに違いありません。つまり、わたしの部屋が、未来の新たな世界における生活や文化の根幹を未来永劫にわたって決めつけてしまう危険性があるのです。

そこで、今回は「西暦2055年の人類滅亡後に地球へ降り立った宇宙人により自分の部屋が古代遺跡として発見されるかもしれない、ひきこもりのわたしが心がけていること」と題し、5つの大切なポイントをまとめてみたいと思います。

西暦2055年の人類滅亡後に地球へ降り立った宇宙人により自分の部屋が古代遺跡として発見されるかもしれない、ひきこもりのわたしが心がけている5つの大切なこと

1. 部屋の前に置かれた食事は素早く片付ける

まず、親がわたしの部屋の前に置いていく食事は迅速に片付けることを心がけています。自分よりも老齢の人骨が懸命に食事を捧げていることが発掘状況から推察されてしまうことは、シコシコがわたしを「聖人」と誤解し、わたしの部屋を「聖域」として勘違いしてしまう最も根本的な原因になるからです。

食欲があるならば残さずに素早く食べ、食欲がないならばゴミ箱へ捨ててしまえばいいのです。食べ終わった食器なども部屋の前に放置することなく、迅速に親を呼びつけ、撤収させるようにしました。親が留守の際には、窓から隣の加藤さんちの庭へ投げ捨てることにしています。

2. TENGAは壁に並べない

大量のTENGAが壁に並べられているのを見たシコシコは、それらを古代人の崇拝対象として誤認してしまうかもしれません。きっと、その独特なフォルムをモチーフとした石像をありとあらゆるところに建立し、古代神として崇めようとしてしまうでしょう。そこで、妙な神秘性を備える性玩具については壁に飾らないのはもちろん、目線より高いところに置くことさえも控えるようにしました。

特に細心の注意を払ったのが、いくつか所有していた性玩具加藤鷹の手です。Gスポットを刺激せんとする手の形が「古代で実施されていた聖なる敬礼」として解釈され、新たな世界におけるフォーマルな挨拶として取り入れられてしまうリスクが高いためです。

なるべく目立たないところに保管するのはもちろんのこと、一つだけを残し、その他は窓から隣の加藤さんちの庭へ投げ捨てることにしました。

3. ぱみゅぱみゅのコスプレ姿の自撮りポスターは外す

わたしのコスプレ自撮りポスターのせいで、きゃりーぱみゅぱみゅの恰好が新たな世界における正装となってしまう懸念も捨てきれないでしょう。

特に、わたしは青ひげが極めて目立つおっさんですので、山奥から採れる青い石を砕いて粉末にし、それを水で溶かした液体を顔に塗る「古代ファッション」が新たな世界で流行してしまう悲劇だけは回避しなければなりません。

すべての自撮り写真を部屋から探し出し、火を放ったのち、窓から隣の加藤さんちの庭へ投げ捨てることにしました。

4. 妖怪ウォッチのグッズを処分すべきか悩む

残念ながら、新たな世界でも差別というものは残ります。動物のような風体で生まれてきた奇形児たちは「異人」として地球の隅へと追いやられ、シコシコやパコパコが暮らす街とはまったく異なる厳しい生活を送っているのです。

ただ、わたしの部屋から妖怪ウォッチのグッズが大量に見つかり、ましてやそれらが大切に保管されていたとしたら……。これまで迫害してきた異人こそが「聖なる存在」として古代では崇められていたということになってしまいます。

シコシコやパコパコといった王族たちはその事実を隠ぺいしようと試みるでしょうが、何者かによって異人たちのもとへ真実が漏らされてしまえば、異人たちは「我々こそが聖なる存在なり」と奮起し、各地の村を襲うことになるでしょう。

ならば、異人たちが差別されている状況を残したままで良いのかというと、そうではないのかもしれません。あえて妖怪ウォッチのグッズを遺すことで、その差別が解消されるきっかけを生み出すという選択も間違いではないでしょう。

しかしながら、それにより社会の安定は失われ、血塗られた争いが生じてしまうということも忘れてはなりません。争いというものは一度起きてしまえば、二度と解決することはない。それはこれから核戦争によって滅亡する人類の一人である、わたし自身もよく知っていることです。

悩みに悩んだ結果、わたしは収集してきた妖怪ウォッチの全グッズを窓から隣の加藤さんちの庭へ投げ捨てることにしました。その判断が正しかったのかどうか。実は、いまだに自信をもって答えることができません。

5. バイアグラを粉々にして捨てる

わたしの部屋には、かつて引きこもる前に愛用していたバイアグラがたくさん残っています。これらは責任をもって粉々にし、窓から隣の加藤さんちの庭へ投げ捨ててやらなければなりません。

なぜなら、シコシコとパコパコが追放された故郷の星では厳しい身分制度が敷かれており、男性の身分は性器勃起時の角度と持続力で決められていたからです。そして、その制度は地球に降り立ったのちも続くことになります。

そのため、わたしの部屋から出土した無数の錠剤を試しにシコシコが飲んでしまえば、その効果に狂喜乱舞し、王家の秘薬として厳重に保管することになるでしょう。そして、シコシコのライバルであるズコズコを支持する新たなグループが現れたとしたら、権力闘争のなかでその秘薬を奪い合う殺戮が多発してしまうことにもなりかねないのです。

また、王家の秘薬の噂は民衆のあいだでも広まることでしょう。反社会的集団は自ら精製した劣悪な錠剤を「王家の秘薬」と称して街で密売し、巨額の資金を得ることになるはずです。そして、その反社会的集団はズコズコ側へ資金を提供し、反社会的集団を押さえこんできたシコシコは王位を奪われ、その危険な錠剤が世の中にますます流通することになってしまうのでしょう。

きっと、その錠剤は勃起時の確度や持続力をたしかに高めはするものの副作用や健康への悪影響がひどく、ただでさえ放射能の影響によって短くなってしまった新たな世界の平均寿命をさらに縮めるという最悪の事態を引き起こすことになってしまうに違いありません。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

もちろん、野に下ったシコシコもこのまま黙ってみているはずがないでしょう。ズコズコによって異人たちの暮らす地域へ追放されたシコシコは、異人たちとともに暮らすなかで信頼関係を深めていきます。そして、ついに異人たちという強力な仲間とともに、ズコズコのもとで悲嘆に暮れるパコパコを取り戻すべく、差別なき真の新たな世界を生み出すべく、再び立ち上がることになるのです。

ただ、この争いもまた、上記の5つのポイントさえしっかりとわたしが守っていれば防げるはずです。そして、そのポイントの多くは、わたしが部屋から外へ出て真っ当な生活を始めさえすれば、そもそも問題にすらならないのではないかと、わたしは気づいたのでした。

そこで、人類が滅亡するまで残り40年となった2015年。
そろそろ、ひきこもり生活をやめることにしました。

まずは、隣の加藤さんちの庭を掃除することから始めてみようと思っています。そして、これまで支えてくれた両親に「あけましておめでとうございます」と頭を下げてこようと思います。