田辺ひゃくいちの冒険

踏みつけたくなるウンコを求めて。

中国語でキャッチコピーを書けるようになりたい日本人の悪あがき(3)

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前回日本製粉ミルクのキャッチコピー「在日本买奶粉,还是回中国养奶牛?(日本で粉ミルクを買いますか。それとも中国で乳牛を飼いますか?)」を再び中国版Twitter微博」に投稿した。すると「わたしは中国製粉ミルクを小さい頃から飲んでいるけど健康だよ」とのコメントが中国人の女性から届いた。

メラミン混入事件のことを改めて持ち出すのもどうかと思ったので「それなら良かった! もし、他にも中国で面白いコピーを見つけたら教えてね」と流そうとしたところ、「もし、中国製粉ミルクの良いコピーが他に思い浮かんだら教えてね」という意味で伝わってしまったらしく、「小さい頃から飲んでいる、なんてどうかな?」と続けてコメントが届いた。

何はともあれ、わざわざコピーを考えてくれた優しさに感謝しなければと「すごくいいね(挺好的)!」と伝えたのだが、それっきり交流が途絶えてしまうことに。なんでだろうと思っていたら、奥さんから「『挺好的』って『まあまあだね』のニュアンスだよ」との一言。


なんという初歩的なミス。中国語を習いはじめてからずっと勘違いしていたらしい。かつての中国語の先生が「挺好的は『すごくいい』の意味デス!」と片言の日本語で得意げに教えてくれたシーンが鮮明に思い出される。

ということは、中国赴任中に出会った現地当局のお偉いさん方に対して「すごいですね!」「さすがですね!」などとヨイショしていたつもりが、「まあまあだね!」と親指を立てて連発していたということじゃないか。周囲の人たちの表情が引きつっていた理由がようやくわかった。


今さらながら背筋がぞっとしたところで、今回も中国語の面白いキャッチコピーの構造をまるっとパクり、中国語のキャッチコピーを自分で書いてみる「何事もまずはモノマネから入るべし」シリーズ、スタート。

中国語のキャッチコピーを見てみよう

(参照:http://fdc.rednet.cn/c/2013/02/04/2902531.htm

原文:两万,干不干!
和訳:2万元でどうだ!

以前にも取り上げたが、これもまたマンション販売の広告である。

キャッチコピーとビジュアルをパッと見た瞬間に思い浮かぶのは、ずばり「売春」だろう。そんな下心で、砂浜に流れ着いた海藻みたいな女性の下着がずり落ちる先へ視線を移すと、「頭金がたったの2万元でマンションを買える」との広告だと気づき、「なんだ、くそ」ということになるわけだ。中国現地では賛否両論、「低俗だ」との批判的な意見も多い広告らしい。


というのも、中国では性風俗に関する規制が日本よりも厳しい。インターネットにはGFWグレート・ファイアウォール)という閲覧規制がかかり、残念ながら中国国内からは崇高なるエロサイトを回遊することはできない。街中でエロDVDなどを大っぴらに販売しているところも見かけないし、風俗なんてもってのほかだ。

ただ、すべて「建前上は」の話である。
じゃなきゃ、中国で蒼井そら氏が大人気ということへの説明がつかない。

VPNや専用ソフトを通してエロサイトは粛々と見られるし、エロDVDをひそかに売っている場所もあるし、街中のいたるところで明らかに妖しいピンク色のライトを掲げているマッサージ店も見かける。100元程度を支払えば即本番となるようだ。

ちなみに、床屋やカラオケ屋の看板を掲げた店でも、性サービスが行われていることもあるので、日本の感覚で気安く入らないほうがいい。お取り込み中に運悪く当局に拘束されるリスクもある。

こうなると、日本よりも性風俗に関する規制が厳しいという見方は変わってくるのではないだろうか。建前上は鼻息荒く罵倒しつつも、本音では鼻息荒く切望する。ある意味、そんな中国のツンデレ的な素質をこの広告は突いているというか、だからこそ反発も強いのかもしれない。


ちなみに「两」は「二」を意味し、「元」は中国の通貨単位である。「干」は「やる」「する」という意味の動詞。中国語の動詞は「動詞+不+動詞(例:干不干)」と同じ動詞で否定形の「不(〜ない)」を挟むことで、「やるのか、やらないのか」と選択を迫る表現になる。

そういえば、前回の「还是(それとも)」も選択を迫るフレーズだった。消費者に選択を迫る言い回しが、中国語キャッチコピーの傾向の一つなのだろうか。

中国語でキャッチコピーを書いてみよう

原文:日本,喜不喜欢!
和訳:日本はどうだ!

先ほどのコピーの構造を借り、成田空港の出発ロビーにて、日本を存分に楽しんだ中国人観光客に掲げたいコピーを書いてみた。

ともすれば日本人が嫌いだとツンツンしはじめる中国へ帰っていく観光客に向けて、日本の素晴らしさを念押ししておきたいのである。彼らが「わかってるよ。日本はすごくいい国だったさ」と認め、母国でも「まあ、わたしは日本のことを好きだけどね」と周囲に広めてくれることを祈る。


ちなみに「喜欢」は「好き」という意味の動詞で、上記のコピーを直訳すれば「日本は好きか、嫌いか」となる。

先ほど「動詞+不+動詞」と言ったので、それならば「喜欢不喜欢」になるんじゃないかと思われた方もいるかもしれないが、二文字で構成される動詞の場合、前の動詞の二文字目(喜欢なら「欢」)は重複するので省略できるらしい。

もちろん、詳しい理由は知らない。それは中国語の先生にでも聞いてみてほしい。ただ、間違えて教えられることもあるので、どうぞお気をつけて。

>> 中国語でキャッチコピーを書けるようになりたい日本人の悪あがき(4)