田辺ひゃくいちの冒険

踏みつけたくなるウンコを求めて。

父の日に死んだ父の話(3)何かと理由をつけては会社を休む

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前回「股間に極太ソーセージを当て」と書いたが、もちろんズボンの上からである。決して裸ではない。父の名誉のために弁解しておく。何の名誉になるのかは知らないが。

年頃のわたしが険しい表情のまま目を向けず、何も答えないでいると「じゃあな」と言ってドアを閉める音が聞こえたので、再び素の表情に戻してくつろごうとしたら、父がドアのこちら側に立ち、にやけている。やられた。腹が立つ。

父がなかなか部屋から出ようとしなかったので仕方なく「どうかしたの」と聞くと、「なんか妙に息苦しくてさ」と言い、出勤のために締めたネクタイを外した。

「へえ、また会社サボるの」とわたしは自分のことを棚に上げて蔑む。父は何かと理由をつけては、会社をよく休むのである。「いや、今日は健康診断だから、がんばる」と父がふてくされて言う。なんだ、その子供みたいな態度は。

どうせ、いつものように大げさに言っているだけだろうと思っていたので、そのときに父がどんな苦しそうな顔をしていたのかはあまり覚えていない。今でもたまに思い出そうとするのだが。もしかしたら、本当にきつくて、わざわざわたしの部屋を訪れたのかもしれない。

結局、「健康診断からそのまま入院することになった」と聞いたのはその日の夜のこと。右肺のほとんどが水没しているとのことで、医者によれば「何かしらの感染症の疑いがある」という。

それからどのような時系列だったのかは支離滅裂なのだが、慌てて戻ってきた母とともに見舞いに行く日がいくらか続き、しばらくすると母とわたしだけが医務室のようなところに呼ばれた。

>> 父の日に死んだ父の話(4)肺がんで余命3か月であることが告げられる