田辺ひゃくいちの冒険

踏みつけたくなるウンコを求めて。

宣伝会議賞グランプリを受賞しても変わらないから「変える」ことにした(2)

前回の記事を公開したあと、予想以上に多くの方から励ましの言葉をいただき、とても驚いた。そして、心強かった。

どちらかというとわたしは、こういうときに「応援してます」や「がんばってください」とストレートには言えないタイプの性悪な人間なのだが、そういったコトバの持つ大切さに今さらながら気づかされ、これからはちゃんと言えるような人間になろうと反省もした。


光栄にも、ある転職エージェントの方からもご連絡をいただき、「いくつか紹介できる広告会社がある。ただ、現実的な問題として、32歳という年齢と広告業界未経験という経歴を鑑みると、労働条件がかなり劣悪なところから丁稚奉公することにはなるだろう」とのアドバイスをいただいた。

それならそれで構わない。彼女はその道のプロなわけだから、きっと彼女が言っていることは正しいのだと思う。ただ、ここで「そうなんですね。わかりました!」と二つ返事で従えるような人間だったら、ここまで人生をこじらせはしなかったわけで。

やめておけばいいのに、ついつい「現実的な問題として」と大前提にされている部分について「本当にそうなのかな」とまずは自分の手で確かめて、自分の体で痛みを感じてみたくなってしまうのである。現実的な「問題」ならば、現実的な「解法」があるかもしれないじゃないかと。結局、解けなかったとしても仕方ない。もし、解こうとする過程で別の問題の解法が見つかったりなんてしたらラッキーだ。


というわけで早速、ゆうちょ銀行に自主提案するシリーズコピーを考えることにしよう。すぐに「▲▲の半分は△△です。」という統一スタイルにすることは決まったのだが、これが意外にも、簡単なようでなかなか難しい。

結果、哲士さんにコピーを見てもらっては書き直すことを繰り返し、膨大なボツコピーと6本の作品が生まれた。具体的なコピーの文言については、もうすこし先に進んだ段階で紹介させていただけたらと思う。


哲士さんは、嬉しいとか悔しいとかの感情が生まれるよりもはるかに速いスピードで「良いものは良い、悪いものは悪い」とコピー案を叩き斬っていってくれるので、心地よいリズムというか前向きなテンポのようなものを場に与えてくれる人だった。

鋭いフィードバックと同時に、最適な方向性へ導くアイデアの種をシンプルな言葉でどんどん目の前に出してくれるため、「なんかメッシっぽいな」と思った。まあ、実際にメッシと会ったことなんてないけれど。

例えば、行き詰まりそうになった瞬間に、「▲▲の半分は△△です。」ではなく「▲▲△△」と四字熟語にしたときの反発具合だけを見てみるのもヒントになる、といったことをサラッと言ってくれるわけである。さすが、CCO(Cheif Copy Officer)といったところだろうか。


広告に関する知識がゼロで、「タグラインってなんですか」という恐るべき質問を投げかけるようなわたしに対しても、「ポスターにはクライアントのURLも載せてあげたほうがいい」といった基本的なことはもちろん、「TCC賞を獲るためには」という戦略的な視点から「ノイズにならない、シンプルな落としコピーの書き方」なども惜しみなく教えてくれた。

忙しいなか、どこのブタの骨かもわからないような人間に対してここまでやれるかと逆に聞かれれば、仮に昼から酒を飲めちゃうくらいにヒマだったとしても、わたしには絶対にできないと思う。


特に参考になったのは「自主提案」のやり方そのものである。

自主提案と聞けば「ポスターを自分で作ってクライアントに提案すればいいだけ」と、誰でも簡単にできそうな気もするのだが、いざ実際にやろうとすると「?」が頭の上に帯状疱疹のごとく浮かび上がる。わたしと同じように業界未経験のコピーライター志望者の場合はなおさらだろう。

なので「職歴の汚しかた」の続編なんかも書いたのち、次回はそこらへんについて教えていただいたことをまとめてみようと思う。

>> 宣伝会議賞グランプリを受賞しても変わらないから「変える」ことにした(3)


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